私がおかしいのか、旦那がおかしいのか、何がおかしくて、おかしくないのか【小説・じゃない側の女 番外編~恥じらいを忘れない側の女 Vol.3】

2018年12月3日
【連載第3回】好む好まざるにかかわらず「じゃない側」からはそう簡単に抜け出せない。すべてのアラフォー女性に送るWEB連載小説の番外編『恥じらいを忘れない側の女(Side慶子)』
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結花ちゃん、真木ちゃん、お気遣いありがとう。でも大丈夫。今は何を言われても、いや、むしろ言ってもらって、私がおかしいのか、旦那がおかしいのか、何がおかしくて、おかしくないのか、ちょっと冷静にわかりたい。ショックが大きすぎたのか、私は今、自分が悲しいのか悲しくないのかすら、もはやよくわからなくなっている気がするから。

「病院に行ったあと、やっとの思いで私の状態を話したら、彼、本当にごめんね、ごめんね、って何度も謝ってくれて……」

「謝って“くれて”って、それ当たり前じゃない? むし何こっちにうつしてくれちゃってんだ、って話だし」

「そ、そうなんだけど……それにしてもすごい謝ってくれて……」

「で? 旦那に言ったの? ひそかに出張先でデリヘル満喫してるの、実は私、知ってましたよーってこと、この機に話した?」

「ううん、それは言ってない」

「なんで?」

「なんとなく……そこは触れたらいけない気がして。そもそも彼の出張先での振る舞いは、私も行きがかり上、たまたま聞いちゃっただけで、彼自身が話してくれたわけじゃないし、いつか話してくれるまでは知らないフリした方がいいかと思って」

「聞かない限り、自分からわざわざ嫁に言わないでしょ、実は俺デリヘル大好きでさー、なんて。でも今回はコトがコトだから、少なくとも何が原因だったか二人で話すわけでしょ? 思い当たる原因くらい聞くでしょ?その時、言わなかったの? 彼、どこでもらってきたか」

「デリヘルって言葉は言わなかった。ただ最近タイに出張した時、接待でそういうお店にどうしても一緒に行かなくちゃいけなくて、その時かもしれないって。あとはもう、ほんとにごめんね、ごめんねってひたすら……」

「ふーん……そっか」

谷原さんも真木ちゃんも結花ちゃんも、この人たちは基本的に土足で人の心に踏み入るようなことを、「しそうでしない」人達だ。

ずけずけと言いあっているようで、自分の見解を相手に押しつけたり、むやみやたらと否定や批判をしない。

自分は自分、人は人。そういうと、なんだかとても冷たそうに聞こえるかもしれないけれど、彼女たちのスタンスは無関心や突き離し、とは違う。正しく言うと、自分の正解が必ずしも人の正解だとは限らないことを知っていて、つまり正解も不正解もないことを知っていて、誰よりもそこをわきまえている人達。

だから今も、きっと3人それぞれに、私と私の旦那に思うところがあってもおかしくはないのに、「ふーん」以上のことを、今、あえて言おうとはしない。

それがこの人たちの優しさであり、聡明さの表れであることが、今の私にはわかる。

「でも、よかったよ。須藤さんも旦那も、一刻を争うような状態ではなくて。さっき、ほぼ治ってるって言ったよね? 一応、落ち着いているんだよね?」

コクリとうなずく私を見て、ふーっと息を吐き出しながら安堵する谷原さんに、真木ちゃんと結花ちゃんも、ニッコリ笑った。

数は少ないけれど、私にも友達はいる。中には付き合いの長い、何でも話せる友はいる。彼女たちもきっと私が悩みを話せば、心配したり相談にのってくれたり、アドバイスしてくれるはずだ。なのになぜだろう。

夫から性病をうつされた話は……しづらかった。いや、出来なかった。出来ない。
仲のいい友達の前では、いいカッコしていたいから、とかいうわけじゃない。そうじゃなくて多分……もし、話を聞いた数少ない友に、夫を汚らわしいものかのように言われたり、万が一非難されたり、さらにはそんな夫と暮らす私にドン引きされたりしようものなら、もうすでに今、動揺とショックでグサグサに傷ついているこのメンタルに、さらなる深いダメージを負い、二度と立ち上がれなくなってしまいそうな自分が、想像できたから、だと思う。

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