どこで間違ったんだろう?あれ?間違ったのかな?今いるここは間違いなのか…【小説・じゃない側の女 番外編~ご機嫌悪くない側の女 Vol.3】

2018年12月17日
【連載第3回】好む好まざるにかかわらず「じゃない側」からはそう簡単に抜け出せない。すべてのアラフォー女性に送るWEB連載小説の番外編『ご機嫌悪くない側の女(Side結花)』
版権:nito/Shutterstock.com
ふーっ……天井を見上げながら、理沙が相当強くつかまれていたと思われる腕をさすりながら、深い深いため息をついた。

「大丈夫? 腕。痛い?」

「大丈夫。でも油断してたから、急に石投げられるとうまく避けられないね。なんかガツンと大きめの石がおでこあたりに当たった感じ」

「酔っぱらいの言うことなんて」

「わかってる。でもあの人が言わんとしていることもわかる。いろいろ、頭ではわかってんのよね、こう見えても。その日暮らしのお気楽キリギリスじゃなくて、むしろ蟻さんばりに堅実、謙虚にあろうとして、精一杯仕事して、精一杯今の自分に出来ること考えて、自分だけが、今この瞬間が楽しけりゃいいなんて全然思ってないんだけどねえ……それはカタチでは見えないもんね」

明らかにあの酔っぱらいの暴言で、予想外に胸を痛めている理沙の姿を見ても、私は、とっさに気が利いたコトが何も言えない。今ここに真木がいたなら、今の理沙に寄り添う過不足ない言葉を言ってあげられるだろうに。私はただ黙って、理沙の腕を一緒にさすることしかできない。

「ところで結花、あのおじさんが転ぶ前、話してたこと覚えてる?」

「えっと……なんだっけ?」

「どちらかといえば、家と仕事が無くたって、夫や子供、家族を持っている人の方が、世の中の皆さまからみれば、生き方として豊かに思われがちだって、あたしが言ったの」

「ああ、そうだったわね。そんなこと話してた」

「仮にね、家や仕事が無かったとしても、それは世の中が不景気なせいだとか、就職氷河期で運が悪いだけだとか、なんていうの? その人本人の資質に拠らないところにも理由があるとか、やむをえないと思ってもらえることもあるわけ。でもね、家族を持たない、持てないってのは、その本人自身に良からぬ原因があるとされがちなわけよ、他の要因ではなく、本人自身に問題があると」

「まあ、そんな見方をする人もいるかもしれないわね」

「わりと大勢いるように思う。そんな感じの論調をここそこに見るから、いくら気にしないっていったって、ふとした時には思うわけ。それ、ほんと? あたしに何かとてつもない欠陥とか、問題があるの?って」

「心身ともに疲れてる時に陥りそうね、その負の思考スパイラル」

「だからなんだって話じゃないんだけど、中高の時、将来自分が、よもやこっち側の女になってるとは思ってなかったなあって」

「こっちって?」

「マイナー側。ああ、そこでいうメジャーとマイナーっていうのは、多数派か少数派かってことね。主流か、非主流というか。少なくとも学生時代はメジャー側にいたはずのあたしが、今はマイナー側のモデルケースよ」

「40代の未婚率2割くらいだっけ? 数で言えばたしかにマイナー側だね」

「結花、40代の5年結婚率とかいう調査があるの知ってる?」

「見たことある」

「あれ、たしか40代の5年後結婚率は限りなく0に近い確率だった気がするわけ。だけど、その恐ろしく0に近い確率は、現在2割の未婚アラフォー全員がそうってことで、つまり未婚の友達はそのまま減らないから、悲観することはないって、この前何かの記事で読んで、笑っちゃった。そこ励まされるのか、って」

「笑ってる場合でもないかもしれないけど、笑える」

「笑えるでしょ?」

「うん」

「そんなの見ると、またふと思うんだよね。あたしはどこで間違ったんだろうって。で、すぐ次の瞬間に思うの。あれ? 間違ったのかな? 今あたしがいるここは間違いなのかな、いや、そうは思ってないはずなんだけどなって……」

■じゃない側の女番外編記事一覧

■汗が止まらない側の女(Side真木)

【Vol.1】最近、頭もワキも汗ダクダク。色の薄いグレースーツの日なんてもう!

【Vol.2】汗を吸ったインナーのあたりが…。もしかして更年期、関係あります?

【Vol.3】再びの独り身。気づけばお惣菜にカップラーメン、冷凍食品で生き延びる日々

【Vol.4】離婚とは、噂以上に気力体力ともに消耗するものなのですね…

全10話を読む >


■酸化に負けない側の女(Side理沙)

【Vol.1】「してもらうこと」を当たり前としない女と「してもらうこと」に恐縮しない女

【Vol.2】言えない。家中の食器使いきるまでシンクに洗い物をためてしまう、なんてこと

【Vol.3】「流れに身を任せて生きる」と「無気力 / 怠惰 / 無責任」は違うのに

【Vol.4】歯のホワイトニングとブラジリアンワックス、やるならどっち先?

全12話を読む >


■現役をおりない側の女(Side結花)

【Vol.1】仕事と育児に追われる分「それ以外のこと」を激しく欲することがある

【Vol.2】50歳になっても60歳になっても絶賛恋愛中!…は、素敵です

【Vol.3】イロコイは、良い恋とか悪い恋とか言える類のものじゃない?

【Vol.4】別れた旦那からの連絡に、思わず“チッ”と毒づきました…

全11話を読む >


■恥じらいを忘れない側の女(Side慶子)

【Vol.1】思わずこらえていたものがこみあげて、無意識に両目からツーっと涙が…

【Vol.2】いくつになっても学ぶことがあるのが人生ってもので

【Vol.3】私がおかしいのか、旦那がおかしいのか、何がおかしくて、おかしくないのか

【Vol.4】生まれてこのかた経験したことがないことがわが身に起きて、ひそかにパニック…

全8話を読む >

■ご機嫌悪くない側の女(Side結花)

【Vol.1】受験、就活、婚活、妊活。どれもゴールだと思ったものは、必ず何か次のスタート

【Vol.2】自分ひとり好き勝手に生きてりゃ、誰からも感謝なんてされるわけない虚しい人生?

【Vol.3】どこで間違ったんだろう?あれ?間違ったのかな?今いるここは間違いなのか…

【Vol.4】人生100年時代に向け、ヒトゴトではなく、自分ゴトとして

全11話を読む >

What's New

Read More

Feature

Ranking