イロコイは、良い恋とか悪い恋とか言える類のものじゃない?【小説・じゃない側の女 番外編~現役をおりない側の女 Vol.3】

2018年11月12日
【連載第3回】好む好まざるにかかわらず「じゃない側」からはそう簡単に抜け出せない。すべてのアラフォー女性に送るWEB連載小説の番外編『現役をおりない側の女(Side結花)』
版権:Buntoon Rodseng/Shutterstock.com
楽しげな家族たちに囲まれる中、一人うなぎを食す真木の姿とその時の思いが我がことのように生々しく想像できちゃうな……と思った瞬間、突如として私たち3人の背後&頭上から、

「あ、あのっ!! じゃ、じゃあ真木ちゃん結婚相談所に登録したらどうかな? 美肌だし、美人さんだし30代にしか見えないから、すぐにたくさん、真木ちゃんとうなぎ一緒に食べたい男の人、寄って来ると思うんだけどなっ」

……と、聞きなれない低めのぼそぼそ声が、ものすごい至近距離で降って来て、100%油断していた理沙と真木は「ぎゃーっ」と、そろって飛びあがった。

勢い振り向いた私たちの真後ろには、先ほどここからはちょっと距離あるソファ席でモグモグとピザをくわえていたあの女性=須藤さんが、自然なカットインを装って実に得意げ半分、照れ半分という顔で、もぞもぞしながら立っていた。

「こんばんは。ご無沙汰しています」

須藤さんはそういうと、丁寧に、理沙と真木と私、3人それぞれに向かって頭をペコリ、ペコリ、ペコリと3回下げた。

「うなぎってあなた、いつから……。そもそもあたしたち居るのに気づいてたの?」

「もちろん。だって谷原さんの声大きいから。谷原さんが、あー暑っつ!って大声出しながら、お店に入ってきた時にすぐ気づいた」

「それはどうも。旦那さん、置いてきていいの?」

「大丈夫。おトイレ行ったから。それよりほんとにね、真木ちゃんみたいに素敵な女の人は、相談所に登録したら、すぐお付き合いしたい人見つかると思うの、私」

と、なぜか先ほどの話の流れに戻したがる須藤さん。

「ちょっと、突然現れて、それどの立場からのコメントよ。やや上からじゃなーい? 大体あなた真木の話、どこから聞いてた? 結婚相談所は今すぐにでも結婚したい人、籍入れたい人がお金払って行くとこでしょ。真木は入籍したいわけじゃないの。むしろ少々懲りてるわけ。だとしたら相談所行っちゃだめでしょー」

1年以上ぶりにも関わらず、のっけから理沙にビシッと打ち返され、ちょっぴりうなだれる須藤さん。……でも、めげないのも前回同様。

「じゃあ、真木ちゃんの会社大きいから、同じビルの中に素敵な独身男性いたりしないのかな?」

「もういないわよねえ。会社の中では、独身男性とも既婚男性とも、一通りさらったわよねえ?」

須藤さんの問いに、なぜか真木本人ではなく、理沙が返すのも前回同様。

「さらった」という、理沙の微妙によくない表現に苦笑する真木を見て、須藤さんが言う。

「そういえば真木ちゃんも『良からぬ恋』をしていた時代があったんだっけ……」

なぜかちょっと傷ついたような、悲しげな顔の須藤さんを見て、理沙は実にそっけなく言う。

「ねえ須藤さん、『良からぬ』って表現やめない? 真木だけじゃなく、あたしもしてたことあるわけで。出来れば『道ならぬ恋』くらいに、やんわりとぼかした文学表現してもらっていい? そもそもイロコイは、良い恋とか悪い恋とか言える類のものじゃないんだから」

「私ね、これまで谷原さんがどんな悪さしてきてもびっくりしないんだけど、真木ちゃんは意外っていうか、いまだに受け付けないっていうか信じられないっていうか……」

「須藤さん、真木に対するイメージがとにかく良すぎなのよ。結花のイメージがいいっていうならわかるけど」

「あ、結花ちゃんにはそんなにいいイメージないです」

「あなたそれはそれで、今、結花にまあまあ失礼なこと言ったのわかってる?」

須藤さんの天然かつ正直な答えに、私も苦笑するしかない。理由やきっかけはよくわからないが、私は彼女にどうやら昔からよく思われてこなかったらしい……ということは、この前この店で会った時、さんざん聞かされた。

■じゃない側の女番外編記事一覧

■汗が止まらない側の女(Side真木)

【Vol.1】最近、頭もワキも汗ダクダク。色の薄いグレースーツの日なんてもう!

【Vol.2】汗を吸ったインナーのあたりが…。もしかして更年期、関係あります?

【Vol.3】再びの独り身。気づけばお惣菜にカップラーメン、冷凍食品で生き延びる日々

【Vol.4】離婚とは、噂以上に気力体力ともに消耗するものなのですね…

全10話を読む >


■酸化に負けない側の女(Side理沙)

【Vol.1】「してもらうこと」を当たり前としない女と「してもらうこと」に恐縮しない女

【Vol.2】言えない。家中の食器使いきるまでシンクに洗い物をためてしまう、なんてこと

【Vol.3】「流れに身を任せて生きる」と「無気力 / 怠惰 / 無責任」は違うのに

【Vol.4】歯のホワイトニングとブラジリアンワックス、やるならどっち先?

全12話を読む >


■現役をおりない側の女(Side結花)

【Vol.1】仕事と育児に追われる分「それ以外のこと」を激しく欲することがある

【Vol.2】50歳になっても60歳になっても絶賛恋愛中!…は、素敵です

【Vol.3】イロコイは、良い恋とか悪い恋とか言える類のものじゃない?

【Vol.4】別れた旦那からの連絡に、思わず“チッ”と毒づきました…

全11話を読む >


■恥じらいを忘れない側の女(Side慶子)

【Vol.1】思わずこらえていたものがこみあげて、無意識に両目からツーっと涙が…

【Vol.2】いくつになっても学ぶことがあるのが人生ってもので

【Vol.3】私がおかしいのか、旦那がおかしいのか、何がおかしくて、おかしくないのか

【Vol.4】生まれてこのかた経験したことがないことがわが身に起きて、ひそかにパニック…

全8話を読む >

■ご機嫌悪くない側の女(Side結花)

12月15日配信開始予定

What's New

Feature

Ranking