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イロコイは、良い恋とか悪い恋とか言える類のものじゃない?【小説・じゃない側の女 番外編~現役をおりない側の女 Vol.3】

【連載第3回】好む好まざるにかかわらず「じゃない側」からはそう簡単に抜け出せない。すべてのアラフォー女性に送るWEB連載小説の番外編『現役をおりない側の女(Side結花)』
イロコイは、良い恋とか悪い恋とか言える類のものじゃない?【小説・じゃない側の女 番外編~現役をおりない側の女 Vol.3】_1_1
版権:Buntoon Rodseng/Shutterstock.com
楽しげな家族たちに囲まれる中、一人うなぎを食す真木の姿とその時の思いが我がことのように生々しく想像できちゃうな……と思った瞬間、突如として私たち3人の背後&頭上から、

「あ、あのっ!! じゃ、じゃあ真木ちゃん結婚相談所に登録したらどうかな? 美肌だし、美人さんだし30代にしか見えないから、すぐにたくさん、真木ちゃんとうなぎ一緒に食べたい男の人、寄って来ると思うんだけどなっ」

……と、聞きなれない低めのぼそぼそ声が、ものすごい至近距離で降って来て、100%油断していた理沙と真木は「ぎゃーっ」と、そろって飛びあがった。

勢い振り向いた私たちの真後ろには、先ほどここからはちょっと距離あるソファ席でモグモグとピザをくわえていたあの女性=須藤さんが、自然なカットインを装って実に得意げ半分、照れ半分という顔で、もぞもぞしながら立っていた。

「こんばんは。ご無沙汰しています」

須藤さんはそういうと、丁寧に、理沙と真木と私、3人それぞれに向かって頭をペコリ、ペコリ、ペコリと3回下げた。

「うなぎってあなた、いつから……。そもそもあたしたち居るのに気づいてたの?」

「もちろん。だって谷原さんの声大きいから。谷原さんが、あー暑っつ!って大声出しながら、お店に入ってきた時にすぐ気づいた」

「それはどうも。旦那さん、置いてきていいの?」

「大丈夫。おトイレ行ったから。それよりほんとにね、真木ちゃんみたいに素敵な女の人は、相談所に登録したら、すぐお付き合いしたい人見つかると思うの、私」

と、なぜか先ほどの話の流れに戻したがる須藤さん。

「ちょっと、突然現れて、それどの立場からのコメントよ。やや上からじゃなーい? 大体あなた真木の話、どこから聞いてた? 結婚相談所は今すぐにでも結婚したい人、籍入れたい人がお金払って行くとこでしょ。真木は入籍したいわけじゃないの。むしろ少々懲りてるわけ。だとしたら相談所行っちゃだめでしょー」

1年以上ぶりにも関わらず、のっけから理沙にビシッと打ち返され、ちょっぴりうなだれる須藤さん。……でも、めげないのも前回同様。

「じゃあ、真木ちゃんの会社大きいから、同じビルの中に素敵な独身男性いたりしないのかな?」

「もういないわよねえ。会社の中では、独身男性とも既婚男性とも、一通りさらったわよねえ?」

須藤さんの問いに、なぜか真木本人ではなく、理沙が返すのも前回同様。

「さらった」という、理沙の微妙によくない表現に苦笑する真木を見て、須藤さんが言う。

「そういえば真木ちゃんも『良からぬ恋』をしていた時代があったんだっけ……」

なぜかちょっと傷ついたような、悲しげな顔の須藤さんを見て、理沙は実にそっけなく言う。

「ねえ須藤さん、『良からぬ』って表現やめない? 真木だけじゃなく、あたしもしてたことあるわけで。出来れば『道ならぬ恋』くらいに、やんわりとぼかした文学表現してもらっていい? そもそもイロコイは、良い恋とか悪い恋とか言える類のものじゃないんだから」

「私ね、これまで谷原さんがどんな悪さしてきてもびっくりしないんだけど、真木ちゃんは意外っていうか、いまだに受け付けないっていうか信じられないっていうか……」

「須藤さん、真木に対するイメージがとにかく良すぎなのよ。結花のイメージがいいっていうならわかるけど」

「あ、結花ちゃんにはそんなにいいイメージないです」

「あなたそれはそれで、今、結花にまあまあ失礼なこと言ったのわかってる?」

須藤さんの天然かつ正直な答えに、私も苦笑するしかない。理由やきっかけはよくわからないが、私は彼女にどうやら昔からよく思われてこなかったらしい……ということは、この前この店で会った時、さんざん聞かされた。

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【Vol.4】人生100年時代に向け、ヒトゴトではなく、自分ゴトとして

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