毎日、緊張とストレスにさらされて?働く40代のニオイと白髪事情【小説・じゃない側の女 番外編~汗が止まらない側の女 Vol.7】

2018年10月5日
【連載第7回】好む好まざるにかかわらず「じゃない側」からはそう簡単に抜け出せない。すべてのアラフォー女性に送るWEB連載小説の番外編『汗が止まらない側の女(Side真木)』
香水
版権:NIKITA TV/Shutterstock.com
スモーキーグリーンベースにヴィンテージライクな花柄をプリントしたシフォン素材のワンピース。風に揺れる裾や袖のほんのりとした透け感が、かわいらし過ぎず、甘過ぎないジャストなところで、結花の透明感と品の良さをひきたてている。今日も神々しいばかりの麗しさ。

理沙は、「いいところに来た!」とばかりに、私をぐいっとおしのけ「ここ座って」と、私との間の席に結花を手招きする。

「珍しいね、平日の仕事帰りに結花が飲めるなんて」

「旦那に言って、月に3日、都度の相談不要で、遠慮や恐縮なしで満喫していい、完全自由の完全オフ日をもらうことにしたの。好きなだけ残業してもいいし、肩こりや腰痛が激しければ指圧やマッサージに行ってもいい。仕事のあと友達とごはん食べたり、映画観たり、ネイル行ったり、エステ行ったり、好きなこと満喫してから時間気にせず帰宅していい、堂々としたオフを3日ね」

「それ、月に3日かー」

「そうよ、子持ちでそうそう好き勝手出来ないわよ。たとえ3日でも、旦那にも子供たちにも、悪いかなーなんて一切思わなくていいオフを正式に夫婦間で設けたのは、気分的にはかなり爽快! ところで、お二人は一体、何をそんな盛り上がってたの?」

背の高いカウンターチェアにひらりと座りながら結花にそう問われ、今日、私と理沙はこの店に来てからまだ汗とニオイの話しかしていないことに気付く。

「元はといえば、理沙の“頭の汗が止まらない”って話から始まったんだよ」

「あ、そっか。ごめんごめん。なかなかの衝撃だったからさ、真木がワキガって。つい、食いついちゃった」

「だから声が大きいって!」

一瞬びっくりした顔をしながらも、理沙の放った「ワキガ」という吸引力あるキーワードに食いつくことなく、さりげなくスルーして微笑む結花は、聡明な大人女子だ。

「理沙、そんなに頭から汗出るようになったの?」

「うん、出始めるとね。あたしの頭上だけ、今雨降りました?ってくらいすごい時もある。だからヘッドスパに月1は行くようにしたの」

「月1でヘッドスパ?! 優雅ねえ。私なんて、本当に病気や何かの治療のための通院か、白髪染めに美容院行くだけで一杯一杯なのに」

「結花、白髪そんなにある?」

「あるわよ、すごいある。だから真木や結花みたいなロングはムリ」

言われてみれば、結花はもうここ何年と大人可愛い、ゆるふわミディアムか、エアリーショートボブが定着している。子供が出来て「時短」かな?と思っていたけれど、白髪問題もひとつの理由だったとは、意外。

「明るめなベースカラーにしたり、相当レイヤー入れて立体的にして、ハイライトとローライトで白髪をなじませたり、自分の好みより、いかに白髪をコントロールできるかが最優先だもの。二人ともいいわよねえ、白髪ないから」

「いやあたしも最近、鏡見てたらピン!って頭頂部付近に、めっちゃ元気に起立してる直毛白髪を2本くらい見つけたんだよね。キラーンと光って、ギョッとした」

「理沙の白髪はそんな元気なの? でもまあ、2本あるってことは20本はあるわね。だってゴキブリも1匹いたら100匹いるっていうし」

「人の白髪をゴキブリと一緒にしないでよ。でもその2本見つけた衝撃もあって、ヘッドスパに月1行くようにしたわけ。ヘッドスパで汗のニオイとって、徹底的にもみほぐししてもらって、血流促進とミネラル補給して、白髪のレスキューにもなれば、一石二鳥だなと思ってさ」

「なるほど。頭がにおう女って、ちょっと残念だものね」

「まだあたしの頭は、周りがわかるほど臭ってないと思うわよ。ただそうなったらイヤだなーと思って、先手の予防よ、予防。その点、真木のワキはすでに、ニオッているらしいから」

「ちょっと!」

両サイドでワーワー言い合う理沙と私の顔を、結花は真ん中の席で楽し気に交互に見比べながら、ニッコリと笑って話し出す。

「理沙も真木も、二人ともそれだけ毎日、緊張とストレスにさらされているってことでしょ? 汗くらい許しましょうよ」

その言葉に反応した理沙が、そっと結花の首筋に近づいてクンクンと香りを嗅いで言う。

「結花は好ましくないニオイとは無縁だよね。春夏秋冬、いつの季節もムスクの甘い香りふりまいてるイメージ。ランバンのエクラとか、フェラガモのインカントとか……とにかく昔から一貫してムスク系だよね? あ、学生の頃は、ボディショップのムスクのパフュームオイル買ってなかった?」

「買ってた! 理沙、よく覚えてるわね、30年以上前の他人のことを」

「自分がどれだけ歳を重ねても、世の流行がどう変わっても、一貫してぶれずにムスク!ってとこが、なんか結花らしいなあって思うよねえ」

「あ、理沙、今ちょっと私のこと馬鹿にしたでしょ。ちょっと、頭貸しなさい。私があなたのニオイをチェックしてあげるから、ほら頭貸して」

「何? 急に頭貸しなさいって、おかしいでしょ。いいってば、やめてって!」

今度は、結花と理沙がジタバタしはじめる。

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