また過度に厳しく自分を律し、歯をくいしばって連日トレーニングしたり、徹底した管理のもと窮屈なまでに頑張って、頑張って、老いや更年期なるものと戦ってます感も、全くない。
自分が元気に、心地よい日々を送れる自分であるために、そんな自分で居られるために、自分の心と感覚と体の声に従って、ただ取り入れたいものを取り入れて、ただやりたいことをやっている。そのために必要なことを、ただ純粋に学びたがる好奇心旺盛な女。そこに無理はないから、楽しいだけ。だから彼女から「必死感」や「悲壮感」なるものが漂うことは一切ない。
かたや私は、我ながらなにかと漂わせちゃってると思うもんなあ、「必死感」と「悲壮感」。ことさら、会社、仕事で一杯一杯になると、ついキリキリピリピリ……。
そしてその反動か、疲れが限界を越えると今度は思いっきり「楽」をしたくて、自分をどこまでも甘やかし、仕事以外は極限まで手抜きをし過ぎるキライのある私は、面倒くさいことに、今度は自分のその甘えになんともいえない「罪悪感」も覚えてしまったりするのだ。
けれど、もうその「罪悪感」とか言う時点で、理沙に言わせれば、違うんだろうな。
甘やかすことがいいとかダメって話でもなくて、「その自分が心地よくて、そんな自分が好きならそれでいいんじゃない? 心地よくないと思うなら、変えれば? 心地よく居るための努力なら、割となんでも楽しくない?」とかなんとか、サラリと言われて終わりの気がする。
健やかに生きるために、楽しく普通に生きる女。日々心地よく生きて、内側から幸福感とか元気とか美しさとか、豊かないきいきとしたものが自然と溢れ出る女、か。
いいよね。そういうの。
理沙は私を、自然体でナチュラルな女だと言うけれど、私から言わせれば全然違う。私はむしろ「不自然」だ。歯をくいしばって必死感・悲壮感→結果、罪悪感、ってこれ、フィジカルだけじゃなくメンタル的にも負のスパイラル以外の何物でもない。
幾つになっても自分の直感や五感に素直で、体の声や欲求に正直な理沙の方がよっぽど健やかな「自然体」。
理沙が歳を経るごとにますますもって、「抜群にセンスいい女度」をあげ続けているように見えるのは、もしかしたらそうやって、自分が感じることにまっすぐ向き合い続けることで、結果として着実に自信が持てる自分らしさを、ひとつずつ作り上げ、増やし続けているからかもしれない。
……なんてことを、平日の会社帰りにふと思わせてくれる女友達がいることを、内心ひそかに、とてもありがたく思う。言わないけど。
昔は友達の存在をありがたいなんて、思っただろうか。出会ってから相当の年月が過ぎてからこんなふうに思うなんて、セーラー服を着ていた頃にはわからなかった。
今日は、そんなイケてる女友達がお勧めするコールドプレス・オリーブオイルとやらを、お言葉に甘えてたっぷりいただくとしよう。ここのとこ、連日ししゃも生活だったから、美味しいもの食べて、元気出さなくちゃ。
あ! あのオリーブオイル、マスターお手製の裏メニュー“ルッコラとラディッキオのパスタ”にかけても美味しそうかも。
さっそくオーダー、行ってきます。
(小説・じゃない側の女 番外編〜汗が止まらない側の女(Side真木)完)
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