ケチるところが的外れな男性は、大概ほかも何かしら…【小説・じゃない側の女 番外編~現役をおりない側の女 Vol.5】

2018年11月14日
【連載第5回】好む好まざるにかかわらず「じゃない側」からはそう簡単に抜け出せない。すべてのアラフォー女性に送るWEB連載小説の番外編『現役をおりない側の女(Side結花)』
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しかし……真木の元旦那、恐るべし。1円を笑うものは1円に泣くというけれど、ケチるところが的外れな男は、大概そのほかのこともピントがずれているものだ。

その点については、私も過去、実体験としてそれを確認済み。

大学時代のこと。サークル中の全女子が憧れるそれはそれは素敵な先輩がいた。顔はもちろん、スタイル抜群、服も靴も持ち物も、すべてにおいてセンスがよくて、テニスもスキーもやることなすこと完璧で、低めの声とすらりと伸びた長くてきれいな指がダメ押しセクシーという、最強無敵のモテ男。確か、当時人気の某メンズ雑誌でモデルもしていたように思う。

そしてそのモテ男先輩は、出会った時から私にゾッコンだった。今やゾッコンは完璧死語だけど、まさにその言葉どおり、彼は「俺は、結花がいい」と私に一目ぼれし、追いかけまわした。当時まだ幼かった私は、大学の図書館で、中庭のベンチでただ彼と隣に並んで座るだけで、1女から4女まで、全学年の女子たちに羨望の眼差しで見られることの気持ちよさに一瞬血迷い、周りの女子たちほど彼にトキメクことはなかったにも関わらず、そのモテ男先輩と付き合うことにしてしまった。

が、しかし。

数週間とたたないうちに、はっきりと気づく大問題がひとつ。そう、この人には、ひとつ大きな問題があった。「どケチ」だったのだ。

デートで行くカフェもレストランも常に割り勘。100歩譲って、割り勘はいいとしても、「この前は俺が端数9円多く出したから、今日は結花が9円多く出す番な」と、1円の単位まで漏れなく詰めてくるみみっちさが嫌だった。それでも、まださほど大金を持っているわけではない大学生。仕方ないのだろうか……とこらえていたけれど、ほどなくして「あーもうこれ、絶対無理だ」と思う事件が起きた。

とある冬の日、私は彼と大通り沿いを歩いていた。流行りのインフルにかかってしまい、まだ病み上がりのデートだった私は、冷たい木枯らしに思わずげほげほと咳き込んでしまった。悲しいかなその咳は止まらず、あまりに苦しかったので、私は涙目になりながら、目の前の自販機を指さし、彼に「ごめんなさい、お水買ってもらえるかな」と、咳き込みながらお願いした。

すると彼は、「水? うーん、ちょっと待って」と言ってきょろきょろと周囲を見回してから、大通りの向こう側、それも6車線ある巨大な大通りの反対側、はるか向こうにある自販機をピッと指さして、こう言った。

「この自販機より、あっちのほうが10円安いから、あっちで買おう。俺、目がいいからこの距離でも値段見えるんだよね!」と、実に得意げに。

その瞬間、私はフリーズした。寒いせいじゃない。この男のダメさに、ピタッと心身がフリーズしたのだ。

隣でげほげほ苦し気に咳き込む彼女に、かなり先の歩道橋を渡らねば到達できない、えらい向こうの自販機まで歩こう、「だって10円安いから」という男。

あ、この男はダメだ、と私は瞬間察知した。

そして翌日、私は迷うことなく彼に別れを告げた。

「ええっそんなことで?!」とか、「他全部いいのに、たった10円ケチっただけで?」と言われるかもしれない。実際当時、女友達という友達全員に「結花は馬鹿すぎる。勿体ない! いくら美人だからって、あんなに顔も体もどっちも満点な男性なんて、二度と現れないんだから!」など、散々言われまくった。

が、私の勘は多分間違っていなかった……と思われる。なぜなら、その絶大なるモテ男は、大学卒業後、華麗なる某一流商社に就職したが、のちに懲戒解雇になったと聞いたからだ。しかもその理由が、長期にわたる経費の不正計上で、相当悪質な私的流用と聞いた時、私は全く驚かなかった。

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12月15日配信開始予定

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