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そんな男性を選んだのは自分…ってことも、よくわかってます【小説・じゃない側の女 番外編~現役をおりない側の女 Vol.6】

【連載第6回】好む好まざるにかかわらず「じゃない側」からはそう簡単に抜け出せない。すべてのアラフォー女性に送るWEB連載小説の番外編『現役をおりない側の女(Side結花)』
そんな男性を選んだのは自分…ってことも、よくわかってます【小説・じゃない側の女 番外編~現役をおりない側の女 Vol.6】_1_1
版権:WHYFRAME/Shutterstock.com
ケチるところが的外れな男は、大概そのほかのことも何かしらピントがずれている。だから私は絶対ケチな男とは付き合わないし、結婚しない。女子大生の頃から、そう固く決めていた。

大学生の頃から、私には、“お金持ちの旦那さんに養ってもらいたい”などという願望は全く無く、一日も早く自立した女性になりたかったわけだけれど、それは同時に、将来連れ添う相手にも自立した男性であってほしいと願っていたに等しい。精神的にも経済的にも甘えずに成熟した男性……に、このモテ男はまずなるまい。と直感的に察した20歳そこそこの自分を、今でも褒めてやりたい。

その苦いプチ経験=大学入学当初、ついはずみで一瞬付き合ってしまったケチなモテ男の反動なのか、次に出会った堅実この上ない同級生、つまり今の旦那とは結婚するまでの付き合いとなり、そのまま子供が2人……で今に至る。

正直それが抜群の正解だったかどうかはわからないが、見目麗しいあのケチな男と歩まなかったことは、間違いなく正解だった。

宝石を買ってくれない、ブランド物を買ってくれない、食事をご馳走してくれない、旅行に連れて行ってくれない……そんなことを願ったわけじゃなかった。
たった1本の水を必要としていた女に、なんの無理もなく出来るにも関わらず、要らぬ「せこさ」を見せた男。それが、その男の器の大きさであり、本質だと私は思う。人の本質なんて、そうそう変わらない。

だから真木、その108円旦那と離婚したこと、悔いることはないと思うよ(悔いてないと思うけど)……と、心の中で私はそっと語りかけた。

「……ねえってば、結花聞いてる?」

「ああ、ごめん。何?」

「だからね、もし結花が108円払えって、別れた男から1年以上経ってから連絡きたらどうする? 払う?」

「そんなこと言うような男性とは、私、そもそも付き合わないので、想像できません」

おおおお……と、理沙、真木、須藤さんがハモリながら、3人そろってパチパチと私に拍手を送ってくれる。

「真木、聞いた? そうなんだよ、そういう男を選んだのは自分……ってことになっちゃうのよ」

理沙が真木の頭をよしよしとなでた。

「よくわかってます。だからすぐ振り込んだし」

「108円?」

「チャリんチャリんって、ATMの硬貨投入口に入れてきた」

「振込手数料の方が高かったんじゃない?」

だっさ、あははははとこの上なく楽し気に笑う理沙の隣で、真木思いの真面目な須藤さんは、困った顔をして、懸命に話を変えようと試みる。その様子は実に健気で、理沙と真木にちょっとトンチンカンな須藤さんが混ざった絶妙な会話は、聞いていてさらに飽きない。

「た、谷原さん、もともとは真木ちゃんの恋のお相手がどこかにいないかって話をしていたんだよね?」

「ああ、そうだ。真木がひからびちゃってるって話だったね」

「ひからびてないってば」

「だってもう1年近く、デートのひとつもしてないでしょ?」

「デートかぁ。デートは確かにない」

「男性と二人で飲みに行ったりは?」

「それはあるよ。でもデートじゃない。昔からたまーに会う男友達と先輩くらいで、彼ら既婚者だから」

「あたしは、真木の次の恋のお相手がもし既婚者でも、それだけを理由に止めはしないけどね」

「いやいや、もう面倒なことはパス。40半ばから既婚者相手に面倒なこと始めるなんて、そんな時間がもったいない。なんていうの? 要らぬことに心が煩わされる時間が、もはやもったいないっていうのかな」

「そうだよ、だめだよ、真木ちゃん。谷原さんに毒されて悪いことしたら」

「毒してませんから。で、その飲みの相手はどんな人? 会社の人?」

「大学の時の先輩と、大学の時の同級生」

「大学しばりだなー」

「だって中高6年間、ご存知皆様とご一緒の女子校ですし、会社は今更そういう感じじゃないから」

「ちなみに真木はその先輩や同級生男子とは、男と女って感じにならないの? ほら、結花と例の大学の先輩みたいにさ」 
  
思わず、飲んでいたワインを吹き出しそうになりながら、唐突に私の名前を差し込んできた理沙に、『やめなさい! 私の話はいいから! やめなさい!』と、キツく目で制する。危ないったらありゃしない。脱線の天才だからな、理沙は。楽しく聞いてたのに急に暴投はやめてくれないかしら。

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