でもまあ、こんな話で延々盛り上がれる私たちは、それぞれいろいろあるけど、ぼちぼち平和なんだろうな……と思う。何も考えずに笑っていられるこんな時間が、今の私にはとてもありがたい。
必死に頭のニオイを嗅がれないようにジタバタしながら結花ともみあい中の理沙が、本日なにげなく口にした、最近ちょっと気になるキーワード。
更年期。コウネンキ。
40代半ば過ぎてどこか不調になると、とかく「更年期の影響かもね」と言われることが多くなる。でも、そんなになんでもかんでも更年期によるもの、ホルモンバランスの乱れのせいかは、正直謎。
ただ、家だって電化製品だってジュエリーだって家具だってなんだって、経年劣化は避けられないように、この歳になれば、人間も多かれ少なかれ、誰でもちょっとは不具合が出はじめたり、どこかしらネジがゆるんできても不思議はない、とも思う。
それでも、その状況を、「劣化」ではなく「変化・エイジング」ととらえて、独特の味わいとかニュアンスが出て来た革製品を楽しむかのように、私たちも自分自身の変化を楽しめたらいいのに。……なーんて言ってはみるけれど、そんなことなかなかに難しいこともまた、わかってる。
だっておそらく、長きにわたって「変化」を「楽しむ」には、日ごろから自分という素材を、長くよい状態で使い続けるための「お手入れ」が大切で、その「お手入れ」そのものを「楽しむ」ライフスタイルにシフトできてこそ初めて、「経年の変化」を「味わう」ことができるようになる気がするからだ。
だとすると、今の私はなにしろその「お手入れ」「メンテナンス」そのものを、あまりにしていない。していなさすぎる。
時に胃が痛かったり、だるかったり、物忘れがひどかったり、生理のサイクルが短くなったり、ほてったり、汗が出たり、イライラしたり、心臓がふいにドキドキしたり……いわゆる「更年期障害の症状例」に挙げられるようなあれこれは、ちょいちょいわが身におきはじめているけれど。
今はまず、理沙に言われたとおり、どれだけ会社や仕事が過酷でも、過労で倒れこみそうになって帰宅しようとも……いや、だからこそ、「普通の生活を普通にする」ところからはじめようかな。
丁寧に、普通の生活を普通にする。
おそらく今の私にとってはそれが、だいぶ先のいつの日か、自分の経年変化を楽しめる私につながる「お手入れ」の第一歩目のような気がする。
普通を変える。か。それが一番簡単で一番難しい。
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