女友達や後輩じゃなく、相談は妻の私に話してほしい…【小説・じゃない側の女 番外編~現役をおりない側の女 Vol.8】

2018年11月17日
【連載第8回】好む好まざるにかかわらず「じゃない側」からはそう簡単に抜け出せない。すべてのアラフォー女性に送るWEB連載小説の番外編『現役をおりない側の女(Side結花)』
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「あの、素朴な質問なんですけど……」それまで、きょとんとした顔でひたすら黙って聞いていた須藤さんが小さく手を挙げて話に割って入る。

「どうして奥さんにそういう辛い状態を相談しないんですかね? 女友達とか後輩じゃなくて、妻の私に話してほしい。なんでも私に教えてほしい。そしたら元気が出そうな食事を作ったりとかマッサージしたりとか、旦那さんが喜びそうなこといろいろ考えるし、平日は腰に手を回したりしませんし。会社のことは言ってくれないとわからないこともありますよ。結花ちゃんも、そう思わない?」

これ美味しいわーと、しみじみとワインを舌の上で転がして味わっている中、急に自分の名前を呼ばれてビクッとする。さっきからみんな、突然こっちに振るの、やめてほしいわ、心臓に悪いから。

でもそうか、この中では、既婚者が須藤さんの他に私しかいないんだ。だから、夫を持つ妻の立場として私に同意を求められてしまうわけか。

うーん。勿論、妻として嫁として、須藤さんが言うこともわかる。わかるけれど、男性が家に帰ってまで仕事の話を、ましてや嫁相手にそんな話をしないのも、したくないのも私にはわかってしまう。出来る男であればあるほど、しないだろう。でもそれを、須藤さんが理解できるようにロジカルに説明するのは難しい。だからごめんね、同じ旦那を持つ身ながら、須藤さんの問いかけに、うなずくことは出来ないわ……と思い、うーんと苦笑いでかわす。

でも、一方で思う。心を込めて、毎日美味しい食事を作って、ただただ一途に愛情をよせてくれる須藤さんのような奥さんに、世の賢い旦那さんたちはちゃんと感謝もしていると思う。ありがたみはわかっていると思う。間違いなく。

須藤さんの質問をナチュラルにスルーする私を見て、理沙と真木も、何事もなかったかのように話し続ける。

「その人、メンタルやられないといいね。大変よね、上に登り切る手前の管理職ってのは。部下たちのメンタル考慮と同時に、自身のストレス管理も自分でなんとかしないといけないわけでしょ」

「ひとまず、理沙が前にお勧めしてくれた、例のオーガニックプロテイン紹介しておいた。あれほんといいと思って。私もあれ飲むようにしてから割と調子いいから」

「イイと思う。たんぱく質はエネルギー源にもなるし、その彼が完全なガス欠になる前にぜひ飲んでおいて損はない。エネルギーが無くなると、どうしても諦めと逃げに行きやすくなるからね」

「自分で言ってた。闘争心と逃走心の間を、ジェットコースターみたいに毎日ぐいんぐいん行き来してるって」

「結構その人、あぶないね。プロテイン飲んで損はないわ」

「あのー……プロテインって、筋肉ムキムキになりたい人が摂るものかと思ってました……」

ボソッとつぶやいた須藤さんに、詳しく知りたければ、あとで詳しく教えてあげるよと、そこはスルーせずニッコリ笑いかける理沙は、まるで先生と生徒のようだ。

でもこの知識豊富な理沙先生は、知りたくもない人にその知見をひけらかすことは絶対しない。私はそこが好き。知りたければ惜しみなくなんでも教える、という謙虚で控えめかつ実は面倒見がいいところ、その華やかでゴージャスな見た目からは一見わかりづらいのだけれど。

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■酸化に負けない側の女(Side理沙)

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【Vol.3】「流れに身を任せて生きる」と「無気力 / 怠惰 / 無責任」は違うのに

【Vol.4】歯のホワイトニングとブラジリアンワックス、やるならどっち先?

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■現役をおりない側の女(Side結花)

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【Vol.2】50歳になっても60歳になっても絶賛恋愛中!…は、素敵です

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【Vol.4】別れた旦那からの連絡に、思わず“チッ”と毒づきました…

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■恥じらいを忘れない側の女(Side慶子)

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【Vol.2】いくつになっても学ぶことがあるのが人生ってもので

【Vol.3】私がおかしいのか、旦那がおかしいのか、何がおかしくて、おかしくないのか

【Vol.4】生まれてこのかた経験したことがないことがわが身に起きて、ひそかにパニック…

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■ご機嫌悪くない側の女(Side結花)

12月15日配信開始予定

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